
どうしてこんなに間違った英語、日本語が教えられているのか
日本で映画やテレビ番組を見ていると誤訳があまりに目に付き、海外に来て日本語の教本、日本語講座のテレビを見ると間違ったことが教えられている。
翻訳を職業としたことのある元業界人として、真実を語ってみましょう。
間違いだらけの吹き替え、翻訳、通訳
テレビの吹き替えで見たときに面白いコメディだったのでDVDを買って見たら、英語で聞くとぜんぜん面白くない。吹き替えで面白おかしくしてあるだけだったわけです。その逆に、英語で聞くととても面白い番組も、吹き替えになると面白くない。
ある映画で、吹き替えの台詞が「やってみないとわからない」。英語で聞くと、「やるだけ無駄」と言っている。
刑事ものの映画を見ていたら、字幕の訳に「土曜の夜に殺害された」と出ていたが、英語で聞くと「サタデー・ナイト・スペシャル(安物の拳銃の意味)で殺害された」と言っている。
戦争映画を見ていたら、アメリカ陸軍Air Cav(Air Cavalry)のことを空軍騎兵と訳してあった。陸軍のヘリコプター部隊なのに。同様に、イギリスの有名な特殊部隊SAS(Special Air Services)。これも陸軍の空挺訓練を受けた機動力をもつ部隊なのに、空軍の部隊にされて、辞書の「広辞苑」にまで載ってる始末。Airは、Airborne(空挺)のことで空軍とは関係なし。
間違いだらけの訳がいっぱい。英語の教本にも間違った英語や訳が載っているし、辞書にも間違った訳が載っているし、初めて英語を学ぶ人は、一体何を信じればいいのでしょうか。
誤訳はなぜこんなにも存在するのか
誤訳に遭遇するのは、日常茶飯事。なぜ、こんなに存在するのでしょう。翻訳を商売にしていた私の口から言うのも何ですが、誤訳が氾濫する理由はいろいろあります。大きく分けて、3つです。
一つは、元来英語の能力のない人間が訳しているから。おそらく、これが一番多い理由でしょう。なんで、そんな人間に訳をさせるんだと思われるでしょうが、答えは簡単。プロは高いので、安く使える素人、あるいはよくて駆け出しを使うわけです。
もう一つは、能力のある(はず?)のプロの訳者がミス。英語はとても幅広いですから、結構、大変なのです。専門用語は多数あるし、それが日本語になっていないのもたくさんあります。例えば、アメリカなどのように、軍用語が会社内で平気で使われるようなところでは、日本語に訳すのにも困ります。一般の読者や視聴者に通じません。説明するわけには行かず、どう妥協するかということにもなるわけです。ですから、専門知識のある人が見ると、訳が違ってるなんてことにも。また、ケアレスミスやタイプミスもよくあることです。
最後は、原稿が訳者の手を離れたあとに変わってしまうミス。これは、訳者の責任は問えないのですが、出版物などでは、ゲラの間に見ることが出来て訳者が訂正出来ることも場合によってはあります。
誤訳の理由1、能力のない翻訳者
能力のない翻訳者は、一般の人々が想像する以上にとても多く存在しています。家庭の主婦がバイトで出来るなんてことをうたい文句に、翻訳を教えることで金儲けしている所もあるように、ちょっと(英検2級も合格しないようなレベル、TOEICなら800点も
取れないレベル)英語が出来るとか、外国に住んでたことがあるとか、留学してたことがあるとか、英文科を出てるとか、という人が翻訳をすると、日常会話程度の英語なら何とかなっても、英語を母国語とする小学生レベルの英語でお手上げ。
それでも、翻訳料を安く上げるために、プロは使わないときには、こういう人たちに仕事が回ります。
例えば、テレビ番組の海外ロケ。プロダクションにはかなりの金が回っているのに、通訳はかなり安い金で現地調達。それも、プロではなく、その国に住んでいて、ちょっと英語が出来るので通訳ということで使われている素人。ある番組を見ていたら、英語で「get down(伏せろ)」と言っているのに、「下がってください」なんて通訳してました。こんなの英語が出来るうちにも入らないほどにひどいもんです。
私が、赤坂にあるテレビ番組のプロダクションから、ニュース用フィルムを訳して欲しいと言われた時のこと。アメリカで取材した軍の演習フィルムで、お抱えの訳者が手を上げたので、専門知識を持つ私に声がかかりました。しかし、フィルムを見る限り、別に難しい英語ではないし、ひどくなまって分からないこともありません。標準的なアメリカ語です。特別な軍の専門用語が出てくるわけでもありませんでした。
ところが、手を上げたお抱え訳者の取ったというメモを見ていると、英語で「イリミネイト(eliminate=除去する)」と言っているのに、illuminate(イルーミネイト=発光する)と書いてある始末。
このニュースフィルム、全部で4分程度のもの。いただいたお金が、「時給」ということで15,000円。いいバイトですが、技能者からみればたいした金ではありません。それよりも、お抱え訳者は一体どんな人なんでしょう。こんな程度の英語ができなくても、一時間に15,000円ももらっているなんて。いい加減というか、ぼろ儲けというか。
同様に、オーストラリアで翻訳の助けが必要だと、あるソフトウエア会社に呼ばれたときのこと。会社に行ってみると、日本人の留学生がいて、彼が担当だそうです。大学に留学しているとは言え、たどたどしい英語でオーストラリア人と会話している、小学生レベルの英語もできない人間に翻訳させてるんだから参ったもんです。
別のアメリカの大手のソフトウエア会社のオーストラリア支社。最近、WindowsやUnixと言ったOS(オペレーティング・システム)に追従。ソフトウエアの日本語化に翻訳経験者が欲しいとのこと。「いくら出す」と聞いたら、年AU$35,000でどうだという返事。こんなのオーストラリアの平均年収にもなりません。プロの翻訳者が仕事でやるには、話にならないほどのはした金。こんな予算で作ったソフトウエアを買わされるんですから、日本語版なんか買わないで、英語版買った方が安心です。
この他、日本語がろくに出来ない外国人が、日本語が出来ると称して翻訳しているケースもよくあります。
0才からの英語教育は、子供の日本語能力を遅延させるからマイナス
今では、0才からの英語教育などと日本でも言われるようになっていますが、うちの子は、0才から英語、日本語、中国語の3ケ国語教育。
妻の方針でしたが、実際にこうした環境で子供を育てている親として言えば、複数の言語を0才から教えるのは子供の母国語能力の発達を大きく遅延させるのでマイナスです。最低でも2才以降まで待つべきです。
子供を育てる親向けの本を読んでいたら、子供が言葉を認識するようになる過程には、聞くことで単語を覚える段階とその単語が一定数に達したところで話せるようになる段階を経ると書いてありました。その単語数は200程度だそうです。
0才から二つの言語を教えてしまうと、単純に計算して、400単語覚えないと二つの言語を話せるようにならないわけです。逆にいえば、一つの言語だけ覚えればいい子供が200単語に達する頃に、まだ100単語しか知らないから一つの言語がしゃべれるようになるのに二倍の時間がかかり遅延するわけです。うちの子供のように0才から3ケ国語にしてしまうと、3倍の時間がかかってしまう計算です。
特に、親が自分で英語を話せないのに早いうちから子供に英語をさせるのは、言ってみれば親のコンプレックス。かと言って、自分ができるからと言ってさせるのは親のエゴ。実用レベルで子供の教育を考え直して見ましょう。
辞書は最低3冊用意
英和、和英辞書は、そのレベルにより、収録語数はもちろん、意味の数まで違います。収録語数は多いけれど、意味が主要なのだけ載っていて他は省略されてしまうのもあります。紙面やページ数の都合で割愛されたりするのです。ですから、一冊の辞書だけに頼ってはいけません。
勉強する人は最低3冊使ってください。商売で英語を使うなら、英和が最低5冊、英英も含めて10冊は当たってみなければケアレスです。
英英まで必要な理由は、英和の辞書では、適当な日本語に当てはめた解釈が載っているだけなので、英語本来の意味する部分が読み取れないことにあります。そこで、英英の辞書で本来の意味するところを理解してから、翻訳している文章の中で適切な日本語にしてやらないとならないからです。こうした日本語は、英和の辞書には載っていないことはしょっちゅうです。英和の辞書に出ているのは、大まかに一致する部分だけですから、微妙な違いはなかなか日本語になっていません。辞書に載っているのは妥協されている部分だけなのです。
辞書を引くだけで訳が出来る、翻訳ソフトで訳が出来ると思っている人は、辞書やデータベースがこうした妥協の産物であることに気付いていません。
辞書を頼りに学ぶのに、辞書が頼りにならないことを最初に理解しないとならないこの理不尽。言葉のマジックなのでしょうか。
辞書では知ることの出来ない本当の意味
オーストラリアにマイホームを買ってから、家の修繕は私の仕事。スーパーマーケットのDIYコーナーに出かけては、修繕用具を見ています。子供が壁にいたずら書きをするような年頃になったので、いつ壁を塗り替えようかと、そろそろ準備を開始。どんなペンキがいいのか、DIYの本を買ったり、店で品物を見比べて調べています。
ある日、ペンキの缶にpremiumとかprofessionalとか書いてあるのに気付きました。買うならやっぱり、professionalかな、などと素人の見栄で思いましたが、premiumも悪くない名前です。
英和辞書でこの二つの単語を調べてみると、professionalは「プロの、職業の」とか出ています。premiumは「プレミアム、掛け金」など書かれていたりして、ペンキとどう関係があるのか良くわかりません。英英の辞書で調べてみると、professionalには「Engaging in a given activity as a source of livelihood(生計を立てるために特定の活動に従事すること)」。premiumには「Of superior quality or value(高い品質/価値の)」。これなら、何となく分かってきましたが、つまりどちらのペンキがいいのでしょうか。
しかし最近、より本格的になり、House building(家の建て方)やHouse Inspection(家の検査)の本まで読んで深く勉強するようになりました。
そして、ある家の建て方の本を読んでいると、Paint(ペンキ)のGrade(品質)には、3種類あることを発見。各々はPremium(プレミアム)、 Budget(バジェット)、 Professional(プロフェッショナル)と呼ばれているそうです。驚いたことに、一番品質の高いのがPremium。一番価格の安いのがProfessional。
Professionalは品質がいいのではなく、安価でより広い面積を塗るために適しているので業務用という意味。つまり、品質が優れているのがProfessionalなのではなく、儲けを十分に出せる程度の安い品質がProfessionalなのです。
Professionalという言葉にだまされて、いいものと思うのは間違い。Professionalは、業務用、利益を出すために使う、の意味。品質とは無関係なのです。
どこから出てくるこんなデマ
今でも人気のテレビ番組「奥様は魔女」。サマンサの主人の名前は、ダーリンで訳されています。これは誤訳で正解は、ダーウィンだなんて言う記事を読んだことがありますが、これは大嘘。
正解は、Darrin(ダリン)です。こんなことは、二ヶ国語放送でも発音を聞いてれば分かるし、英語版で見てれば、はっきり書いてあります。どこの誰がダーウィンだなんて言い出すんでしょうか。
同じくダバサちゃん。昔、女だけのロック・グループ、Runaways(その後有名になるJoan JettとLita Fordがティーン・エイジャーの頃やっていたバンド)というのが流行った頃、リード・ボーカルが子役のタバサちゃんだったなんて大嘘記事もありました。これも、英語版で見てれば、はっきりとキャストに名前がでてます。
こんな嘘はどこから出てくるのでしょう。英語の出来ない人間だというのは簡単に想像できますが、それを雑誌に取り上げる方も困ったものです。
事実無根? 翻訳者の創造物も存在
ダリーとダリーは別の名前で、ダリーとドティーが同じ名前
翻訳されたものが、必ずしも原作と一致しないことは、誤訳に明らかですが、どこでどうこんな訳になったのかと疑問に思う訳もままあります。
TVシリーズ「アルフ(ALF)」のあるエピソードでのこと。ウイリーがテントを買って帰ってくると、アルフが、原語で「エレファントマンの亡骸か」と聞きます。ところが吹き替えは、「バットマンの衣装」。
話の結末部分で、アルフがエレファントマンのように紙袋をかぶっているシーンがあり、明らかに伏線。バットマンなんて訳したら、台詞がつながりません。どういう意図の訳なのか理解に苦しみます。
もっとふしぎな吹き替えもあります。TVシリーズの「コンバット(Combat!)」でのことです。第二次世界大戦のアメリカ軍歩兵を描いたストーリーですが、サーンダース(Saunders
)軍曹率いる分隊の常連に、リトルジョン、カービー、ケリーの三人が登場します。
ところが、ケリーなんて名前は、原語上には存在しません。原語上はケイジ(Caje)となっています。ケイジはニックネーム。ケイジュン(Cajun)の略で、ルイジアナ南部に住むフランス系アメリカ人。それで、フランス語がしゃべれるというわけです。ちなみに、あるエピソードで、レメイ(LeMay)と呼ばれています。フランス語の苗字であり、ケイジュンと言うことが確認できるわけです(ちなみにフルネームはPaul LeMay)。ケリーなんていう名前は、いったい、どういう意図の訳なのでしょう。完全に翻訳者の創造によるものとしか思えません。
英語の発音を正しく日本語にしようとするのは大変。例えば、耳で聞いていると、ダリーとダリーは同じに聞こえる。ダリー・パートン、ダリー・ウエスト。どちらもアメリカのカントリ・シンガー。ところが、スペルは、Dolly PartonとDottie Westで全く異なる。日本語読みで表記すると、ドリー・パートンとドティー・ウエスト。つまり、ドリーとダリーが同じ名前で、ドティーとダリーが同じ名前。しかし、ダリーとダリーは別の名前。超混乱状態。
小説のPollyannaも、日本ではふつうポリアナとかポリアンナと書かれている。もともとPollyと Annaという二つの名前がくっついたもの。ポリーとアナでポリアナが普通の発音。よくてパリアナ。パレアナなんて表記されているのがあるが、パレはいただけない。
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