仕事と就職は別のこと

 今の若い世代は、就職を知らない子供達が増えています。就職すると自由がなくなるから。就職したいけど就職先がなくて。理由が何であれ、事実です。さらには、終身雇用制度の崩壊、リストラ、不況と、大人たちも失業して再就職先なし。正しい仕事の理解と意識が必要です。

貧民の貧民による貧民のためのおなぐさみ記事?

 2003年の日本ならゴールデン・ウィークも明けた頃、正社員として就職すると「一軍」、派遣、アルバイトは「1.5軍」なんて書かれた新聞?記事を日本の大手新聞社のウエブサイト上に見つけて読んでいると、記事に引用されているXX研究所の所長や主席研究員の分析に素朴な疑問がわきました。
 この人たちは、就職者だろうし、記事を書いた(まとめた)記者も普通、就職者。独立すれば自分の名前を付けた研究所の所長としてコンサルタント会社を作るわけです。新聞記者も独立するとフリーのライターや編集者となります。まだ、そこまで行っていないサラリーマンでしょう。
 つまり、就職した者が就職していない者より優越感に浸るために企画された記事なのでしょうか。
 リンカーンの言葉になぞらえれば、就職者の就職者による就職者のための記事。
 20世紀は、多くの人が就職して働く時代。就職がなかった昔とは違います。読者の殆どが就職者だから、最も多い読者層にアピールするためにそういう切り口の記事にしているのは納得できますが、それでいいのでしょうか。単に新卒者の就職事情が厳しいだけでは、私が個人的に知る友人の範囲でも、もう25年も前からのこと。何の進歩もありません。
 今は、若者が自ら就職を拒否してフリーターの道を選んでいます。不況で就職の出来ない人、失業して再就職出来ない人も増えています。理由は何であれ就職しない人が多くなっているのだから、就職しないで生きる方法の切り口で記事にした方が、ずっと読者の役に立つのでは。
 「バイトから正社員に昇格」するわけではありません。就職していたって、昇進して役職になったら、給与が減った例はざらにあります。残業代は出ないが、残業は増え、職責は増す。ところが、役職手当なんて、ヒラで残業していたときより少ない金額。同じように、正社員になったら、バイトしていたときより金が減ったなんてこともよくあります。金のために仕事しているのだから、金が減るんじゃ意味ありません。不況だといっては、社員の社会保険もないがしろにする会社も増えているご時世。「バイトから正社員に降格」が実情。
 なんで正社員にこだわるのか、とても疑問です。

失業者、コンサルタントでぼろ儲け

 失業した人がよくやる仕事にコンサルタントがあります。
 私も技術者として「就職」している時に、何度か仕事上でこうしたコンサルタントに会ったことがありますが、安易にコンサルタントを使うことは考え物です。大企業でもこうしたコンサルタントを使っていますが、レベルが低く、マナーの悪いコンサルタントも多いからです。会社側は自分達にない技能を短期的に簡単に補えると思って使うわけですが、実質はそんなに甘いものではありません。
 逆にいえば、知らないから適当に利用されるのです。
 具体的な例を挙げると、私が日本でネットワーク・アプリケーションのエンジニアをしていた時のこと。日本で著名な広告会社が製品を見たいと訪れました。技術コンサルタントと称する外部から雇ったテンプを連れていました。
 広告会社の社員から、「サーバーは兼用でも使えるのですか、ログオフしても使えるのですか」という質問があり、私は「使えないですね」と回答しました。すると、そのテンプ技術コンサルタントは、サーバーを操作してログオフし、画面上に異常のないことを見て、「使えるじゃん。ちゃんと動いてるじゃん」と発言。
 私はあきれてしまいました。言葉遣いの悪さもさることながら、ネットワーク・アプリケーションですから、サーバーにアクセスして使うクライアント側からみて実際に稼動するかの接続テストが必要です。
 そんな基本も理解していない、技術的に低次元な人間が、技術コンサルタントと称して大会社から月に百万円とか、二百万円とか取るんですから、おいしい商売です。

就職すると必ず失業する構図

 今の時代、様々なところから労働形態の変化が作られています。ライフスタイルの変化、技術革新、競争相手のグローバル化。よりよい仕事を求めての転職は一般化し、よりよいライフスタイルを求めて、仕事はするが就職しない人も増えました。労働者がフリーエージェントの思考に変わってきたわけです。これは、労働者の移動を意味しています。
 一方、経営者にとっては人材を確保するために、様々なメリットを労働者に提供します。過去なら、定年退職まで雇い、定年で辞めれば退職金がたんまりなんていう長期的なメリットが目玉でした。会社にとって、良い人材を一度確保すれば交換する必要がありません。これは、定年が55才というように今より短かく、日本の経済が比較的安定していたあるいは成長していた頃にはリスクの少ないメリットでした。
 会社の寿命は30年と言われていた時代です。大学を卒業して新卒入社しても、定年まで33年間の勤務。ほぼ会社の寿命と一致します。
 今の若者なら、定年退職は65才(さらに引き上げられる可能性大ですが)。定年まで43年間の勤務。未だに会社の寿命が30年で考えても、間違いなく、就職年数の方が会社の寿命を上回ります。誰しも一度は会社の倒産を経験する構図が作られてきているのです。これは、会社の寿命が縮まることでさらに悪化します。会社の寿命が20年に縮まっていれば、同じ65才定年でも二度は会社の倒産を経験する構図です。
 技術進歩のおかげで我々の平均寿命が延び、同時に定年が引き上げられます。
 技術進歩の早いおかげで、会社の製品サイクルが短期化。必要な能力、技術の入れ替えが増え、会社の寿命が縮まって行きます。技術進歩のおかげでグローバル化による競争相手が増え、それも会社の寿命を縮めていきます。
 これから、就職するとどんどん倒産を経験する回数が増えていくのです。

上司、かわいいのは自分だけ

 これは私が失業手当てをもらっていた時のこと。職安の紹介で上野にある会社を訪れました。大手電機メーカー出身の社長自ら、面接。給与の交渉がまとまり、採用するとのことで、配属先の担当部長に会うことになりました。
 事務所を訪れ、部長と面談すると、仕事は海外派遣だと分かりました。つまり、下請け会社です。そして、「健康診断を受けてもらう、証明書類を提出してもらう」ということに。さらに、社長がOKした給与が高いと文句をつけ、再交渉しようとします。「海外に派遣されている間だけ、この金額でいい」と私が譲ると、「仕事場が変わって給与も変わるなんて、そんなバカな話はない」と言います。「社長がいいといったのですから、部長さんには権限ないでしょう」となだめると、しぶしぶ承知しました。
 職安に採用の知らせをし、せかされて卒業証明書や住民票を集めて回っていると、部長から、派遣先となる社長の古巣の系列会社へ呼び出されました。そこで、派遣先の担当者と会わせるというのです。ところが、行ってみれば担当者は外出中。この部長、アポもなしに訪問してるのです。ニ時間も待たされた挙句、1分顔見せしておしまい。
 後日再び、呼び出せれ、今度は派遣先でプロジェクト・リーダーである本部長が出席する打ち合わせに来てくれ。行ってみれば、本部長、会議室内に見慣れない顔の私を見つけて「誰これ」。担当者から説明を受けると、「外部の人間なんか使えるか。そんな甘ったれたプロジェクトじゃない」と一喝。
 同席していた部長はメンツまるつぶれ。帰りに、「まだ、本採用じゃないから」とコロット態度を変えて、保身の始末。採用するからと書類を急いで集めろとせかした上、散々あちこちに連れ回しておいて、都合が悪くなれば、ポイ捨てです。

今日いっぱいで首

 私が、外資系の会社でバイトしていたときに、いつものように同僚(社員)のデスクに行ったら、別の人間が座っていたことがあります。二日前には、確かにその席にいたので、どこの席に移ったのかと思い、聞いてみました。
 すると、昨日付けで首にされたそうです。
 彼と二日前に話をしたときには何も言っていませんでしたし、首を宣告されたような素振りはありませんでした。そのあとに、通告されたのでしょう。

 外資系で仕事をするのは、うらやましがる人も多いですが、実際に働く身になると、かなりシビアです。
 アメリカのある大手のICメーカーの日本支部技術部長だった人が、
 「何の予告もなく、明日から来ないでいいよ、と首を切られた」

 また、都内であるアメリカの金融機関の支店に勤務していた人は、
 「いつものように朝、出勤したら、支店が閉鎖されていた」

 実は、解雇や支店がつぶれたくらいは、まだいいほうなのです。突如、アメリカ本社から、日本での操業をすべて打ち切られてしまったなんていうのもあります。
 つい最近もオーストラリアで、コンピューター直売で有名なゲートウエイのショップが、いきなり閉鎖。オーストラリアでの事業を完全撤退したためだそうですが、お客はもちろん、従業員も突然、放り出されてしまったわけです。

もっといい金

 結婚すれば、扶養家族が出来て、もっといい金が必要になります。子供が生まれれば、扶養家族が増えて、もっといい金が必要になります。しかし、結婚しても、子供が出来ても、給料は増えてくれません。
 もっといい金になる仕事が必要です。もっといい金を払ってくれる会社に移る。もっと金を稼げる仕事に転職する。考えてみればとても単純な答え。

 車のメカニック(修理工)だった友人、結婚しました。最初は共働きでしたが、子供が出来ると、もっと稼がなくてはとエイティーン・ホイーラーのドライバーに転職。アメリカのハイウエイを走るあのでかい18輪大型トレーラーの運転手です。修理工だった頃には、当時のアメリカの平均年収である25,000ドル程度。トラッカー(トラック運転手)になって、年収50,000ドルに倍増。子供は二人に増え、マイホームも買いました。まだ、30代前半のこと。
 修理工からトラッカーへ転職するために、当然、トラック・ドライビング・スクールに通いました。近くに勤務していたメカニックの頃とは異なり、遠方にも荷物を運びに行く仕事です。彼の住むマサチューセッツ州以外の州まで数日かけて運送することもよくあります。家族に会えない日もあります。
 しかし、それもマイホームのローンがある間の辛抱、肉体労働でも稼げる若いうちの辛抱。子供が大きくなって幼稚園に行くようになると、奥さんも仕事をするようになりました。忙しい毎日ですが、転職してよかったファミリーです。

ジャブ・ホップ

 仕事や会社をよく変えることをジャブ・ホップ(Job Hop)と呼びます。私はその典型で、仕事としては、郵便配達、畜産、スーパーマーケット、工場、卸し問屋、流通センター、工事現場のガードマン、広告勧誘テレマーケター、ビルの窓拭き、ホテルやデパートの夜警、携帯電話の調査員、ビル管理、業界雑誌の編集、テレコム・エンジニア、コンピュータ・ネットワーク・エンジニア、コンピューター・ソフトウエアのテクニカル・サポート、書籍翻訳、フリーランス・ライター、アウトドア・インストラクター、ボディガード、家庭教師など。会社としても、バイト、契約、派遣、正社員として働いた先が20社程度。20年程度の間にしたことですから、毎年、職種と仕事先を変えていたことになります。
 私の友人にもジャブ・ホップをよくしていた人間がいます。様々な職種につき、ある程度の能力がつくと自分で事業を開始しました。最初は車のメカニックとして修理店、次にミリタリー・ショップ、そしてコンピューター・ソフト開発会社。自分のしたい仕事を楽しんでいるジャブ・ホップなわけです。
 これだけ転職が出来るのは、もちろん、そうした技術を身に付けたからのこと。仕事に振り回されているのではなく、自分が仕事をコントロールしているのです。一つの仕事が失敗したから、別の仕事を試みるという、目標のない、方向性のないジャブ・ホップではありません。
 低次元の仕事をあれこれ変えていては、何をやってもだめなやつ、遂行能力のないやつと思われてしまいますが、一つの目的を達成したら次の目的を達成する、有能なジャブ・ホップは、仕事を楽しむ、ひいては人生を楽しむ手段なのです。

マルチな技能者になるか経営者になるか

 景気がよくて仕事があるときには、仕事の分割化が行え、特定の仕事ないし職種をするスペシャリストが会社内に保持されます。不況になると、特定のことしか出来ない人間は不要になり、マルチ・スキルな人間が重宝します。一人で二人分の仕事範囲を持ち、給料は一人分ですむからです。
 また、総合的な視野を持たない人間、つまり、脳となって指揮できない人間も必要なくなってきます。
 そこで、分割、細分化されていた狭い能力の人間は会社から切り離されるわけです。言ってみれば、脳は維持しないとならないが、手足は切捨て。スペシャリストは、アウトソースすればいいだけ。さらには、脳と言っても、開発に携わる人間もアウトソースされるようになり、会社に必要なのは経営陣だけとなってしまいます。
 つまり、会社に残って仕事するには、経営陣にならないとなりません。会社の外で仕事するには、マルチな技能者にならないとなりません。究極のパターンですが、経営者になれない我々にとっては、まず、何か一つ技能を身に付けてから、その技能の数を増やしていくことが大切というわけです。

ヘッドハンターの使い方

 仕事の斡旋、仕事探しの仲介となる通称ヘッドハンター、エージェントを使うのも仕事探しの一つの手です。私もコンピューター系の仕事をしている時に、何度も、ヘッドハンターからの接触を受けました。
 必ずしも仕事を見つけられるわけではないですが、重宝します。自分で探さなくても仕事を持ってきてくれるからです。また、適切な仕事があると、求人広告が出される前に知らせてくれるので有利です。ですから、いろいろなところに登録するのが得策。ただし、登録に料金を取ったり、紹介に料金を取るところは使わないこと。こういうのは、プロではありません
 ヘッドハンターは、人材を紹介して生計を立てているので、雇用が成立すると謝礼がもらえるのが普通です。ですから、高い給与で(と言っても、ヘッドハンターは殆ど外資系の会社が顧客ですから、年収いくらですけれど)雇用が成立すればするほど、儲けになるわけです。
 この謝礼は、ヘッドハンター会社によってパーセンテージが異なりますが、年収額の15%から20%が相場。つまり、年収500万円で雇う場合、75万円から100万円がヘッドハンティング会社へ支払われます。
 こうしたことから、金銭的な面では、ヘッドハンターを仲介して交渉と言うこともあります。このため、引き抜かれる我々にはクライアント(求人社)に転職をしたくなるような話の進め方をしますし、一方では、クライアントに自分のところから人材を採用してもらうようにと売り込みます。そこで、話が違うぞなんてこともままあるわけです。
 金銭的な面での食い違いは少ないものの、ヘッドハンターから聞いていた話を信じず、じっくり細部まで、実際のクライアントと再確認することが大切です。こうした自衛策を講じておかないと、後々、厄介なことにもなりかねません。 






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